恋の訪れ
「もう、それでね香澄さん。莉音ったら昴先輩に運ばれちゃったの」
放課後、あたしの誕生日だからと言って真理子に連れ出されたケーキ専門の喫茶店。
来たものの、真理子は香澄先輩に今日の出来事をひたすら話し、来るんじゃなかったと今更ながらに思った。
「へー…昴がねぇ…」
「昴先輩、カッコ良かったんだ」
「って言うか、昴がそんな事すること自体、ビックリだけどね」
「えー、そうですかね?」
「そうだよ。で、どうして莉音はぶっ倒れるくらいに眠ってなかったの?」
「そ、それは…」
思わず口を紡ぐ。
だって、そんな事言えるわけないでしょ?
毎年貰ってた金平糖が昴先輩だったなんて言えるわけないよ。
「それは何?」
「あー…もしかして金平糖の犯人を見ちゃったの?」
「えっ!?」
香澄先輩の後、真理子があまりにも衝撃的な事を言うから、声を上げてしまった。
「やっぱそうなんだ。誰だったの?」
「ち、違うよ。見てない、見てない。見ようと思ってたら、また寝落ちしちゃって…」
「もー、何なのそれは。これだから莉音はお馬鹿なのよ」
「馬鹿って言わないでよ…」
頬を膨らますあたしに打って変わって、真理子は呆れた表情でため息を吐き捨てる。
だって、絶対に言えない。
今は絶対に、真理子にだって香澄先輩にだって言えないんだから。