恋の訪れ

「あー…そんな頃もあったね」


なんて誤魔化して惚けてみたけど、お姉ちゃんはそうも甘くはなかった。


「はっ?もしかしてアンタもう終わったの?」


真理子同様お姉ちゃんは馬鹿っぽく笑う。

仕舞には、「色気ないからだよ」とまでも嫌味を言ったきた。


スッと睨みつけるあたしに“あたしから別れたの!”なんて言葉を吐き出そうかと思ったけど、それはさすがに言えなかった。

言ったからって、どうなる訳でもない。

ただ、あたしが虚しくなるだけだ。


だから。


「お姉ちゃんに言われたくないわ」


とまでも言ったのに。


「あたしもアンタにその言葉言われたくないわ」


なんてまた嫌味っぽく返してくる。


立ち上がってフンっと顔を背けてお姉ちゃんの横を通り過ぎると、フワっと酒と混じって大人の香水の香りを漂わせる。


だけどお姉ちゃんと女王はまた違う感じ。


やっぱ、あの女は好きくない。


そもそも何でもこうやってあの女王とヒロ君の事を思い浮かべるあたしもどうかと…思ってしまった。

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