恋の訪れ
「莉音の、このお花畑の頭の中のほうが訳分かんないわ」
「お花畑じゃないし、」
「弘晃の前ではデレデレしちゃってさ」
「別に普通だもん」
「それのどこが普通なわけ?サクヤ先輩が、莉音が無視したって言ってたよ。可哀そー…」
「別に可哀そうだとも思わないし。しかも昨日だって――…」
思わずそこまで言って口を堅く閉じる。
危うく、昨日の昴先輩の事を言いそうになった。
だけど真理子には言えない。
まだ言えない。
もし昔の男の子が昴先輩だったなんて言っちゃうと、真理子の奴弾けちゃうに決まってる。
言わなくても、もう目に見えてるんだから。
「え、何?」
「なんでもない。もう真理子も嫌い」
「もー、そんな事言わないでよ。ケーキ奢ってあげるから」
「えっ!?ほんとに?やったー」
「ほんとアンタは単純だよね」
「で、今日にする?」
「今日は無理。タツキと約束あんの」
「えー…」
「近々連れて行ってあげるから」
「うん、分かったー…」
真理子が言った通り、単純なのかも知れない。
でもケーキ食べれるだけでいいんだ。
なんて思って浮かれてた矢先。
その一日が終わった放課後、ばったりサクヤ先輩に出会ってしまった。