恋の訪れ
行く途中、サクヤ先輩はひたすら口を開いてたけど、あたしは全部先輩の声を無視した。
マジで言ってんの?とか、本気?とか、俺も本気でしちゃうよ?
とか色々言ってたけど、苛々してた所為か全て無視した。
そして駅の近くのホテルに入ってすぐ、見た事もない異様な光景に目を思わず細めた。
薄暗い部屋の真ん中に大きなダブルベッド。
ホテル…はホテルだけど、ラブホだと分かった瞬間、初めて感じるこの雰囲気に今更ながら戸惑いを感じた。
「どうしよう…」
「あー…もしかして莉音ちゃん初めて?」
思わず呟いた言葉にサクヤ先輩はクスクス笑みを漏らし、あたしの顔を覗き込む。
「サクヤ先輩は…」
「んー…俺?俺はホテルと友達だから」
目の前でニコっと微笑んだサクヤ先輩…
と、友達って、なに?
思わず引きつった顔を見せると、サクヤ先輩はそのままベッドにドカって座って胡坐を掻く。
そのままポケットからタバコを取り出して口に咥えた。
「か、帰りましょう…先輩」
今更ながらに思った。
サクヤ先輩は危険な人なんだ。
なのに、こんな人とホテルだなんて…
「え、帰る?折角来たんだから一発ヤッて帰んねーと」
「はいっ?」
「だって、そう言って莉音ちゃんが連れて来たんだし」
「いや、あの時は…」
「強引にさ、莉音ちゃんが連れて来たんだから、俺を気持ちよくしてくれねーと帰れねーよ」
「え、えぇっ、」
あたふたするあたしの目の前で、先輩はニコっとしながらタバコの煙を吐く。