恋の訪れ
「ね、莉音ちゃんのテクで俺を癒してよ」
「ま、待ってください先輩。ム、ムリですから…」
物凄く焦るあたしに先輩はクスクス笑みを漏らし、
「冗談だって、莉音ちゃんの相手は俺じゃねーし」
そう言いながらベッドから降りてテーブルにある灰皿に灰を落とす。
「もう…やめて下さい」
「元はと言えば、莉音ちゃんが連れて来たんだけど」
あたしが連れて来たのには間違いないけど、心臓がバクバクしてこれ以上もちそうにない。
「だって…って言うか相手は俺じゃないって何ですか?」
「えー…だって昴じゃん」
「は、はいっ!?何言ってるんですか?」
「あはは。莉音ちゃん、可愛いねー」
「もうからかわないで下さいよ」
「ごめん、ごめん。だってさ莉音ちゃん可愛いから虐めたくなるの」
「って、言うか!」
そこまで強く言って、あたしはサクヤ先輩の隣に腰を下ろした。
「うん?」
「サクヤ先輩は可愛いと美人どっちが好きですか?」
「うーん…俺は可愛いかな」
「何でですか?」
「何でって…ほら言うじゃん。美人は三日で飽きるってね。ちなみに昴も可愛い系だよ」
「別にそんな情報いりません。昴先輩は嫌いです」
別に昴先輩の好みなんて聞きたくもないし、知りたくもない。
「へー…あんなお世話になってんのに?」
「お、お世話?」
「あー、違うか。あいつが俺にお世話になってんのか」
訳のわからない事を1人で言ってるサクヤ先輩が気になる。
ソファーの上で胡座を掻いてタバコの煙を吹かす先輩に思わずあたしは眉を寄せた。