恋の訪れ
「なんで金平糖だと思います?」
「さぁ…莉音ちゃんが好きだからじゃない?」
「って言うか、あたしサクヤ先輩の前で一度も食べた事ないですけど。なんで知ってるんですか?」
「……」
「それに、″あたしが好きだからじゃない?″って、どー言う意味ですか?まるで金平糖を誰かに貰ったような言い方して」
「……」
「隠してますよね、サクヤ先輩!」
眉を細めてサクヤ先輩の横顔を見つめると、先輩は深いため息とともにタバコの煙を吐き捨てた。
「もう昴に聞きなよ」
開き直ったかのように昴先輩の名前を出すサクヤ先輩は、困った表情であたしに視線を向ける。
「やっぱ昴先輩なんだ」
「って言うか、もう分かってたんじゃねーの?」
「知ってましたよ。でももしかしたら違うかなって。じゃあ聞きますけど、昴先輩が日本に居なかった間、誰が届けてたんですか?」
「……」
「サクヤ先輩、ですよね?」
「そうだけど」
こんなにも簡単にあっさりと認めてしまったサクヤ先輩に思わず、目を見開く。
もう、どうにでもなれって感じなんだろうか。サクヤ先輩は何度もため息を吐き捨ててた。
「やっぱ、そうだったんだ…なんで?」
「だから昴に聞けって」
「酷いですよ。何で黙ってたんですか?」
「別に黙ってたつもりもねーんだけど」
「じゃあ何で毎年…。それがサクヤ先輩が言ってた昴先輩への貸しってやつですか」
「そう」
天井を見ながら吐き出す煙にサクヤ先輩は再びため息を吐き出した。