恋の訪れ
「大変です、先輩。ねぇ、昴先輩!」
「あ?んだよ、うっせーな」
背を向けていた先輩が再びあたしの方に向き、閉じていた目を開ける。
「大変なんです」
「何が?」
「今、1時35分です」
「あっそ」
「あっそ。じゃないです…どうしよう、あたし。こんな時間に帰ったら怒られちゃう」
「てかお前、心配なんかしないから帰らないって言ってたじゃねーかよ、」
「だって、あれは…。ねぇ、先輩…」
助けを求める為、また目を閉じようとする先輩の身体をそっと揺らす。
あたしの手が冷たいのか昴先輩の身体が自棄に温かく感じる。
触れた身体があまりにも筋肉質で、一瞬ドキっとなったのは気の所為だろうか。
こんな時に、昴先輩って、細いのに筋肉質なんだ。なんて馬鹿な事を考えてしまった。
「もぅ、男とホテル居ましたって言えばいいじゃねーかよ」
「そ、そんな事言えないです」
「まぁな、そんな事言ったら葵ちゃんビックリだろーな」
「もぅ、先輩…」
面白がって笑いながら言ってる先輩に一息吐き、持っていた携帯に再び視線を落とす。
だけど、ママから一切電話も何もない事に思わず首を傾げた。
とくにあたしから連絡した記録もなにもない。
こんな夜中だったら当たり前に連絡くらいあるはずなのに何もない…