恋の訪れ
「もう葵ちゃんには言ってあるから」
不意に聞こえた声に、慌てて視線を上げる。
「えっ、ママに?何で先輩が?」
「お前、起きねーんだから仕方ねーだろ」
「な、なんて言ったの?」
「ホテルで泊まるって」
「えぇっ?ホ、ホテルなんて言わないでよ」
「そんな動揺すんなよ。嘘にきまってんだろ。お前の友達とみんなで遊んでる途中で寝たっつったから」
「それでママはなんて?」
「ほんとにごめんねって謝ってた。つかマジで俺が眠いから寝かせろって。お前も寝ろよ」
「えぇっ、ここで?」
「ここでじゃなかったら何処で寝んだよ」
「でも…」
あたふたするのも当然だろう。
ホテルなんて来た事もないし、こんな風景も初めてで。なのにこんなところで男の人と二人だなんてもっと初めてな事なのに寝れる訳がない。
しかも昴先輩だし。
あのよりによって、学校で有名な先輩だし。
…無理。
「つか今更?」
「え?」
「何で今更、焦ってんの?」
「はい?」
その拍子、グっと引っ張られた腕に体制を崩し思わずベッドに倒れ込む。
見上げるあたしの上から昴先輩の顔が現れ、フッと口元を緩めた。