恋の訪れ
「え?何?」
途惑ってんだからそこはスルーしてよ。なんて思ったけど、ヒロ君は首を傾げながらあたしを見てくる。
「あ、いや。ちょっと買い物に…」
なんて嘘をついてしまった自分が最悪だったりもする。
「へー…楽しんで来いよ」
「あっ、ヒロく――…」
「ねぇ、ヒロ?」
突然言葉を遮ったのは、まさしく女王の声。
甘ったるく“ヒロ”なんて呼ぶ声に嫌気がさす。
ヒロ君は何処かに行くの?なんて聞こうとした言葉なんてもう必要すらない。
今からヒロ君はこの女とお出かけ。
ギュっとヒロ君の腕に絡みついた女はまるで“あたしのモノだから”とでも言いたそうな表情であたしを見た。
だからその視線からフイっとするあたしに、
「じゃあね、新田さん」
なんて、別に言ってもらいたくもない女からの声が突き刺さる。
「何、あれ…」
思わず吐き出してしまった声とため息。
頭を駆け巡るのは、ヒロ君…趣味悪いって事ばかり。
だから無意識の内にあたしはその場から離れてた。