恋の訪れ
「ちょっと莉音!!何処に居るのよ!!」
耳に当てる携帯からガンガンと突き刺さってくるのは紛れもなく真理子の声。
だから思わず携帯を少しだけ遠ざけてしまった。
「正門の前」
携帯を話して口を開くあたしに真理子の深いため息が零れ落ちる。
「何でそんな所に居るのよっ!昇降口って言ったじゃん!!」
弾けた声に顔を顰め、通話口からザワザワした音を聞きながらあたしは門から運動場に顔を覗かせた。
そこから見えるのは駆け足でこっちに向かってくる真理子の姿。
「ま、まぁ…」
真理子の姿を見ながらそう低く呟いた。
「何が、まぁ…なのよ!」
スッと顔を引っ込めたと同時に、バシッと横に現われた真理子はあたしの肩を叩く。
顔を顰めるあたしに対して息を切らす真理子は持っていた携帯の通話を切る。
未だに耳に携帯をあてているあたしの耳にはツーツーと電子音が流れ、
「だって…」
そう小さく呟いて電話を切った。