恋の訪れ
「だから何で?」
「染めた方がね、大人っぽく見えるかなーって。それに馬鹿扱いされそうじゃないでしょ?」
「てか莉音、超ウケんだけど、なにそれ!髪染たら馬鹿扱いされないって!」
お腹を抱えてケラケラ笑う真理子、同様目の前の香澄先輩までもが笑ってた。
「って言うか、真理子だって香澄先輩だって染めてるじゃん。だからあたしも染めるの」
「ママには言ったの?」
「言ってないよ」
「ダメじゃん言わなきゃ。ビックリするよ?」
「え、何で?お姉ちゃん見た事あるでしょ?すっごい色だよ!茶色通り越して金髪じゃん」
「莉音は染めない方がいいって」
「そうだよ莉音。莉音は染めない方がいいよ、悪い虫がくっつくしね」
真理子に続けて香澄先輩までもがダメって言う。
そもそも悪い虫って何よ。
「もうね、決めたの。予約もしてるもん」
「えー…絶対にやめた方がいいよ」
「あたしもそう思うなー…黒髪似合う子なんてめったにいないんだから勿体ないよ」
「そんな事したらパパもビックリするよ?」
「でもパパはね、もうお姉ちゃんでビックリだから別に大丈夫だよ」
「だからー…そういう問題じゃないんだってば」
その後も何でか分かんないけど散々、真理子と香澄先輩に言われたけど、あたしは二人を無視して染に行った。
案の定、それで帰ったらママにビックリされた挙句、パパにまでも驚かれたのは確かだった。
でも染めただけなのに、凄く大人っぽく見えてしまった事にちょっぴり嬉しくなった。