恋の訪れ
「ん、ええっ、莉音?」
すっごい驚いた声を出すヒロくんは、あたしを見たまま呆然とする。
「莉音、どした?髪」
続けられた言葉に更にヒロくんは目を丸くした。
「染めたの」
「何で?」
「うーん…なんとなくね」
「へー…莉音じゃないみたい」
「え?あたしじゃないって?」
「あー…ううん。似合ってる」
「ほ、ほんと?」
「あぁ」
「ありがとう、ヒロくんっ、」
手をヒラヒラと振って再び足を進めていくあたしにの背後から、「バッカみたい」真理子の呆れた声が飛んでくる。
「それに初め莉音だって気づいてなかったじゃん。超ウケんだけど!」
真理子はそう言ってケラケラ笑い始める。
「でも似合ってるって言ってくれたし」
「そんなの言葉の綾に決まってんじゃん」
「えー…そんな事ないよ」
「弘晃はね、そんな奴なんだよ。ノロけるのもいい加減にしなよ」
真理子の言葉に頬を膨らませ食堂へ入る。
そしてサンドイッチを購入したあたしは席に座ったと同時に、遠くの方で視線を感じたお姉ちゃんに、目を向けた。
良く見ると、軽く手招きをして呼んでる。
「お姉ちゃんが呼んでる」
「え?香恋さん?あ、ほんとだ」
真理子も視線を向けると、「行ってくる」そう告げてあたしは席を立った。