恋の訪れ
大学生側の入り口から出て、ちょっと死角に入った所にお姉ちゃんが居て。
「なに?…って、えっ!?サクヤ先輩まで」
お姉ちゃんの隣に居たサクヤ先輩に声を上げると先輩は口角を上げた。
「俺が居たらダメなの、莉音ちゃん」
「いや、別に。で、何?」
「アンタさぁ、この髪どーしたのよ」
「どうって染めたの」
「なんで?ってか、あたし目指してるって何よ!?」
それを言ったのはもちろん今笑っている先輩。
って言うかサクヤ先輩とお姉ちゃんも仲いいんだ…
「うーん…あのね。馬鹿にされないように…かな」
「はぁ!?意味わかんない。しかもアンタあたしのコテ使ったでしょ!?」
あたしの髪を引っ張るお姉ちゃんに思わず苦笑いをする。
「貸してもらっただけだよ」
「やめてよ!それにママがビックリしてたわよ」
「って言うか、あたしからすれば、お姉ちゃんのほうが派手すぎてビックリなんだけど。ねぇ、先輩?」
首を少し傾げてサクヤ先輩を見ると、先輩はさっき点けたタバコを咥えたまま苦笑いを漏らした。
「って言うか、そうじゃなくてさ。莉音ちゃんのイメージがね」
「イメージってなんですか?」
「ほら、こう…可愛いイメージが、ね」
「あー、もうアンタがアンタじゃなくなるわ」
髪を染めただけで何でこんなに言われるんだと思った。
お姉ちゃんだって真理子だってサクヤ先輩だって香澄先輩だって、昴先輩だって、みんなみんな染めてんのに、どうしてあたしはダメなんだと思うと、その話だけで気分が悪くなる。