恋の訪れ
「だろー…俺も言ったんだけどな、莉音ちゃん聞かねーの。昴もビックリだって」
「あー…昴どこにいんの?」
「あーアイツ来てねーよ、まだ」
「ふーん…あの男も忙しい奴だね」
ってか、また来てないの先輩。
ほんと自由人だわ。
それに忙しいって、寝てるだけでしょーが。
「で、莉音ちゃん。昴嫌がるよーこの髪」
先輩に数本摘ままれた髪に視線が行く。
「って言うか、あたし昴先輩の彼女でもないんで」
「それにアンタさぁ…髪染める前に胸でかくしろって」
「はぁ!?何言ってんの、お姉ちゃん!!」
「だってさぁー…ほら」
お姉ちゃんがそう言った瞬間、あたしの胸に手の平が直撃する。
「ギャー!!」
思わず悲鳴を上げた所為は、あたしの胸にサクヤ先輩の手だったから。
お姉ちゃんがサクヤ先輩の腕を掴んであたしの胸に押し当てたからだ。
咄嗟に後ずさりして、「先輩、何すんのよ!」って叫んでみる。
「俺じゃねーし、手が勝手に行っただけ。でも、まぁ…あれだな。昴はもうちょいデカい方がいいかな」
なんて言うこの男に平手打ちしたいくらいだった。
「でしょー…だからこの前、昴に揉んでやれって頼んだに断ってんのよ」
「莉音ちゃん、それは勿体ねーよ…」
「ちょっと!なんの話してんのよ!もうほんとに最低なんだか―――…」
「おーい、莉音?何してんのよ」
そうあたしの声を遮って来たのは不思議そうにする真理子だった。