恋の訪れ
季節も12月に入って、肌寒く嫌いな季節に移り変わる。
学校帰り、真理子と別れ駅周辺のショーウインドーがクリスマスモードに全て移り変わってて、思わず見入ってしまう。
別にクリスマスなんてあたしには関係ないけど、それどころかお姉ちゃんにクッキーを頼まれるだけだ。
しかも、店の客にあげるから作ってって。
なんであたしが作らないといけないのか分かんないと思いつつも毎年作ってる自分に呆れる。
「ねぇ、ちょっとキミ?」
不意に聞こえた声とともに、肩をポンと叩かれる。
振り返ると2人の男が微笑んでいて、「え、何か?」とりあえず言葉を返す。
「ねぇ、アンタめっちゃ可愛いね。今から俺らとどっか行かね?」
「え、いや…いいです」
「は?なんで?まーまー、来なよ」
グっと引っ張られた腕に身体がフワッと浮かび足が縺れる。
「えっ、ちょっ、」
引っ張られる腕を離そうと、必死になっている時、「おーい、莉音じゃねーかよ」なんて微かに聞き覚えの声に咄嗟に振り返る。
「あ、…弟!」
思わず声を上げた言葉に男たちは不意に立ち止まる。
「弟?」
「そう。だから離して!あの子、喧嘩っ早いから」
「はぁ?なんか面倒くせーわ、こいつ」
思わずすんなりと離してくれた腕を摩り、あたしは駆け足で弟へと向かう。
そう、そこに居たのは制服を着崩した昴先輩の弟だった。