恋の訪れ
「いいの?ほんとに?」
「いいのって、もう買ってんだから」
「うん、ありがとう」
「俺んちで食えば?」
「えっ!?聖くんちで?」
「だってお前、こっからだとお前んちまで距離あるぞ」
「確かに…」
あたしの家とは真逆の道を結構歩いたから、帰るのに物凄い時間が掛かるのは確か。
でも、だけど…
「俺んちに居れば美咲か兄貴帰ってくんだろ」
「えー…美咲さんはいいけど、昴先輩はちょっと…」
「え、なんで?」
「うん、なんとなく」
暫く会ってないから会いずらい…って事もあるし、また馬鹿にされそう。
絶対に家なんか行ったりしたら。
家には来るなって言われてるし。
「じゃ、帰れば?」
「えー…遠いじゃん」
「んじゃ、どっちだよ!誰も帰ってこなかったら俺が送ってやる」
「えっ、ほんと?」
「あぁ。でもチャリだぞ」
「ってかさ聖くんって、優しいんだね。先輩と大違いだよ」
「あー…兄貴はねぇ…冷たいよな」
「だよねー…」
「だからってお前、俺に惚れんなよ」
「えぇっ!?惚れないし」
「そく否定してんじゃねーよ。ってか何でお前、兄貴の事、先輩って呼んでんの?」
聖くんは思い出したかのように首を傾げる。
物凄く不思議そうに。