恋の訪れ
「だって先輩だし」
「あんな昔、遊んでたのに?」
「うーん…ってか、あたし覚えてなかったの先輩の事。名前もだし、聖くんの名前も今日知ったの」
「はぁ!?マジで?どんだけ馬鹿なんだよ」
やっぱ兄弟は兄弟だった。
あたしの事、すぐに馬鹿って言う。
「もぅ…言わないでよ。やっぱ聖くんも酷い男なんだね…」
「え、俺?兄貴よりマシだろ、」
「だ、だって聖くん前、言ったでしょ!お姉ちゃんより落ちてるって!結構傷ついたんだから!」
「あー…あれ?香恋さんはすげえ美人と思うけどさ」
「ほ、ほら!お姉ちゃん美人ってみんな言うんだから」
「いや、だからあれだ。香恋さん美人だけど、兄貴は莉音の顔の方が好きだと思うけど」
「は、はいっ!?」
「そー言う事」
「意味わかんない!ごまかさないでよ!」
「あー、ほらほら着いたから入って食えよ」
あたしの背中を軽く押した先輩は玄関まで足を進める。
途中、駐車場に目を向けると、赤と黒の高級車はなかった。
それにしても豪邸かよって、毎回思う。
「ねぇ、聖くんちってさヤバいよね?」
「ヤバい?」
「凄いよねーこの家。豪邸じゃん。パパって何してんの?」
「うーん…アパレル会社経営?ブティックとか…」
「えっ!?社長さん?」
「つか知らねーの、お前」
あまりにも衝撃的な事を言うもんだから、持っていたケーキの箱を思わず落としそうになってしまった。