恋の訪れ

「知らないよ、そんな事」

「お前、何も知らねーのな」


家の中に入って、聖くんは飲み物とフォークと皿を手にテーブルの上に置く。


「ありがとう」

「ってか、兄貴に聞いてねーの?」

「だって先輩とは会話続かないもん。むしろ馬鹿にされるし冷たいし酷いの」

「あー…分かる気はするけど。莉音にはそんな事ねーじゃん」

「そんな事あるよ?」

「そうか?他の女にはもっとすげぇ冷たいけど」

「うーん…やっぱ悪魔だね」

「悪魔って!」


ゲラゲラ笑う聖くんは初めとの印象が全然違くて、おもしろくて明るい。

昴先輩とは性格が全く違う事が分かる。

ま、まぁ…あたしとお姉ちゃんもだけど。


「いただきまーす。ねぇ、聖くんも食べようよ?」

「いらねー、俺、甘いもん好きじゃねーし」

「え、そうなの?」

「そう」


そんな聖くんと他愛ない会話でどれくらい居たんだろうか。

時間すら分からなくなった時、ガチャリと玄関が開いた音に視線がそっちに向かった。


「あ、兄貴じゃね?」


ソファーで寝ころんでいる聖くんの言葉に、ゴクリと息を飲みこむと、案の定リビングに入ってきたのは昴先輩だった。


「あ、昴先輩おかえりなさい。久しぶりですね」

「は?お前、何してんだよ、」


先輩はあたしを見る途端、表情を崩す。


「ケーキ食べてるんです」

「見れば分かる。何でここで食ってんだってんの」

「聖くんに買って貰ったんです」

「はぁ!?わっけわかんね。だから何で?」


昴先輩は顔を顰めたまま、ため息交じりでそう呟く。
< 255 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop