恋の訪れ
「知らないよ、そんな事」
「お前、何も知らねーのな」
家の中に入って、聖くんは飲み物とフォークと皿を手にテーブルの上に置く。
「ありがとう」
「ってか、兄貴に聞いてねーの?」
「だって先輩とは会話続かないもん。むしろ馬鹿にされるし冷たいし酷いの」
「あー…分かる気はするけど。莉音にはそんな事ねーじゃん」
「そんな事あるよ?」
「そうか?他の女にはもっとすげぇ冷たいけど」
「うーん…やっぱ悪魔だね」
「悪魔って!」
ゲラゲラ笑う聖くんは初めとの印象が全然違くて、おもしろくて明るい。
昴先輩とは性格が全く違う事が分かる。
ま、まぁ…あたしとお姉ちゃんもだけど。
「いただきまーす。ねぇ、聖くんも食べようよ?」
「いらねー、俺、甘いもん好きじゃねーし」
「え、そうなの?」
「そう」
そんな聖くんと他愛ない会話でどれくらい居たんだろうか。
時間すら分からなくなった時、ガチャリと玄関が開いた音に視線がそっちに向かった。
「あ、兄貴じゃね?」
ソファーで寝ころんでいる聖くんの言葉に、ゴクリと息を飲みこむと、案の定リビングに入ってきたのは昴先輩だった。
「あ、昴先輩おかえりなさい。久しぶりですね」
「は?お前、何してんだよ、」
先輩はあたしを見る途端、表情を崩す。
「ケーキ食べてるんです」
「見れば分かる。何でここで食ってんだってんの」
「聖くんに買って貰ったんです」
「はぁ!?わっけわかんね。だから何で?」
昴先輩は顔を顰めたまま、ため息交じりでそう呟く。