恋の訪れ
「だって…聖くんに彼女役頼まれたから、そのお礼に…」
「はぁ!?彼女役!?」
「うん…」
「おい、聖!!お前、こいつにそんな事、頼むなよ」
昴先輩はソファーで寝ころんでいる聖くんに向かって、剣幕を張る。
だけど聖くんはシレっとして顔だけこっちに向けた。
「つーかさぁ…俺がその場に居なかったら、莉音、変な男に連れて行かれてたと思うんだけど」
「は?」
「強引に男2人に腕掴まれて引っ張られてたよ、莉音…」
「……」
「俺が居なかったら、きっと莉音、犯されてたね」
「お、お、犯され…」
思わず聖君の言葉に、口が戸惑い気味に開く。
そんな事ないでしょ。なんて思いながらも想像しただけで怖くなった。
昴先輩の口からは舌打ちが聞こえ、ため息までもが聞こえる。
「って事で、俺出かけるから。兄貴に送ってもらって」
通りすがりの聖くんに仕方なく頷くも、昴先輩と二人にしないで…なんて思ってしまった。
だけどここに来たのはあたしだから、どうしようもない。
聖くんが出て行ったあと、あたしの隣に座る先輩からため息が聞こえる。