恋の訪れ
「あのな、莉音。フラフラ着いて行くな」
「えー…なんで?聖くんだよ?先輩の弟じゃん」
「いや、そうだけど。彼女役って意味分かんねー事すんなよ」
「ケーキ買ってあげるって言うから」
「馬鹿。馬鹿じゃねーの、お前。ケーキでつられんなよ」
「だって…」
「つか、お前…なんだよこの髪」
「染めたの」
そう可愛く言ってんのに、
「そんな事すっから変な男に引っかかんだろーが」
昴先輩から呆れた声と舌打ちが更に聞こえる。
「でもね、聖くんが居たから助かったんだよ」
「居なかったらどうする」
「居なかったら逃げる」
「逃げられねーから引っ張られてたんじゃねーのかよ」
「うーん…」
「いいか。髪の色もどせ」
「やだ」
「もどせ」
「だって先輩も染めてんじゃん。しかも何色なの?銀色じゃん」
「銀じゃねーよ、アッシュだって。つか莉音には似合わねー…」
グっと引っ張られた髪の所為で、頭がフワンと先輩のほうに寄りかかる。
その所為で昴先輩と急接近したものだから、先輩の香水が鼻にしみつく。
やばい。このいい香りに癒されそうになる挙句、視線を上げると、これまた物凄い端正な顔が目に入り、咄嗟に顔を背けてしまった。
一瞬でも昴先輩にドキドキしてしまった自分にビックリする。