恋の訪れ

「ってか莉音、帰るぞ」

「えっ、もう?」

「もうって、お前はここで何すんだよ」

「特になんもないけど」

「じゃ帰るぞ。俺今から行くとこあっし」

「何処行くの?」

「どこでもいいだろ。ちょい着替えてくっから」


先輩は立ち上がってリビングから出ていく。

何処行くんだろ。

まぁ別にどうでもいいけど、なんて思いながらケーキの箱を閉じる。

そのケーキの箱と鞄を持って玄関に向かい、その場で立ち止まる。


物凄く急いだのか先輩は、レザージャケットを抱えたまま階段を慌ただしく降りて来た。


「行くぞ」


そう言って先に行く先輩の背後をあたしは着いて行く。

制服と違って、私服の先輩はやっぱりどう見ても高校生には見えなかった。


私服姿もカッコいいし、おまけに男前だし、背も高いし、考えたらほとんどの女の子達が先輩に興味引くのも分かる気がする。


「最近どうなの?」


車に乗ってすぐ昴先輩はあたしに顔を向ける。


「どうって?」

「調子いいのかよ」

「うん。凄くいいよ。って言うか先輩…気にしすぎ。なんの心配もいらないですから」

「だったらいいけど」


もうこの前の会話は全て、忘れようと思ったから。

昴先輩は気にしてるかもだけど、あたしの中では何もなかった事にしたい。


先輩の所為でもないし、あたしが気をつけてたら何の心配もないんだから。


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