恋の訪れ

「ちょっとコンビニ寄っていいか?」


車を発進させて暫く経ったとき、昴先輩はそう言ってあたしに視線を送る。


「いいですよ」

「悪いな」


目の前に見えたコンビニに入って停車した時、「何か飲み物いる?」先輩の言葉に首を傾げた。


「いいんですか?」

「あぁ、なに?」

「じゃあ温かいミルクティ」

「はいよ」


エンジンを掛けたまま車から降りた先輩に視線を送っていると、丁度出入り口付近で出くわした女の子達に声を掛けられた先輩は足を止める。

制服姿って事はきっと先輩と同じ年なんだろうか。

相変わらず派手な女達が先輩に何か語りかけていた。


同じ学校じゃないけど、その制服で分かる。

香澄先輩と同じ学校の制服だった。


先輩を前に話す女達は笑顔満開って感じ。だけどその前の先輩は至って普通だった。

車の中だから何話してんのかも聞こえないけど、何故か無性に気になる。


別に先輩の話なんて聞きたくないけど、何故か気になった。


そして暫く話して先輩はコンビニの中へ、女達は外に出て来た瞬間、こっちに視線を送って来た一人がここぞとばかりにあたしを睨んだ。


だからつい咄嗟に視線を避けてしまった。


だから。だから嫌なの。

昴先輩と居ると絶対にこうなっちゃうから。

あたしを標的にする。

別に先輩の女でもなんでもないのに、なんで睨まれないといけないのかが分かんない。

これが初めてじゃないから本当に嫌。
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