恋の訪れ
「…はい」
車に戻って来た先輩はあたしの目の前に温かいミルクティを差し出す。
「ありがとう」
俯いてた顔を上げ、受け取りそれをすぐに喉に流し込んだ。
さっきの人達は誰?なんて聞くほど先輩とあたしの関係なんて何もない。
だからと言って″睨まれたんだけど″って言う勇気すらない。
むしろあの人たちが先輩とどー言う関係なのかも知りたくもない。
あぁ…なんか疲れる。
さっき先輩に凄く調子はいいって言ったのに、今ではそうでもないみたい。
何故か家まで無口になってしまった。
あたしだけじゃなく昴先輩だって何も話してこなかった。
だからなのか、車から降りてドアを閉めようとした瞬間、
「…莉音?」
不意に聞こえた昴先輩の声で閉める手が止まる。
「どうしたんですか?」
「いや、何もねーわ」
「何ですか、それ」
思わず笑みを漏らしてしまったあたしに先輩はフッと鼻で笑う。
「じゃーな」
「有り難うございます」
「あぁ」
ドアを閉めてすぐ発進していく車を消えるまでずっと見つめてた。
なんだったんだろうと思いながら一息吐く。
家の中に入ってケーキを冷蔵庫に仕舞うと、そのままソファーで目を瞑った。