恋の訪れ

「もうすぐクリスマスじゃん」


数日後、真理子の家で香澄先輩と他愛ない会話をしている途中、なんだか嬉しそうに真理子は頬を緩めた。


「ねぇ、香澄さんはなんか予定あるの?」


興味新々に聞く真理子に香澄先輩は一息吐き、見ていた雑誌から視線を上げた。


「うーん…イブの日に先輩にご飯行こうって言われただけ」

「えーっ、それって恋ですか?」

「違うわよ。ただ行くだけ」

「そんなイブの日に?」

「うん。だからって別になんもないけどね」

「えー…分かんないですよ、そんな事。…で、莉音は?」

「え?」


不意に振られた言葉に、思わずポッキーを食べてた手が止まる。


「イブはどうするの?クリスマスは毎年、莉音とお泊まりだけどー」

「寝る」


そう答えて、あたしは再び止めていた手を動かした。


「もう、莉音ったら寝るって何なのよ」

「だって毎年寝てるから」

「ダメだよ、莉音。じゃあさクリスマスの日皆で遊ぼうよ」

「え、皆って?」

「サクヤ先輩とかさ、昴先輩も誘っちゃおうよ。ユミ達とみんなで楽しく遊ぼうよ」

「やだよ、絶対に嫌」

「もー、なんでそんな事言うの?楽しもうよ」


真理子は頬を膨らませながらあたしの腕を軽く揺する。

なんでまたみんなと会わなくちゃいけないのよ。

どーせ、ロクな事ないんだから。

< 262 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop