恋の訪れ
「もうすぐクリスマスじゃん」
数日後、真理子の家で香澄先輩と他愛ない会話をしている途中、なんだか嬉しそうに真理子は頬を緩めた。
「ねぇ、香澄さんはなんか予定あるの?」
興味新々に聞く真理子に香澄先輩は一息吐き、見ていた雑誌から視線を上げた。
「うーん…イブの日に先輩にご飯行こうって言われただけ」
「えーっ、それって恋ですか?」
「違うわよ。ただ行くだけ」
「そんなイブの日に?」
「うん。だからって別になんもないけどね」
「えー…分かんないですよ、そんな事。…で、莉音は?」
「え?」
不意に振られた言葉に、思わずポッキーを食べてた手が止まる。
「イブはどうするの?クリスマスは毎年、莉音とお泊まりだけどー」
「寝る」
そう答えて、あたしは再び止めていた手を動かした。
「もう、莉音ったら寝るって何なのよ」
「だって毎年寝てるから」
「ダメだよ、莉音。じゃあさクリスマスの日皆で遊ぼうよ」
「え、皆って?」
「サクヤ先輩とかさ、昴先輩も誘っちゃおうよ。ユミ達とみんなで楽しく遊ぼうよ」
「やだよ、絶対に嫌」
「もー、なんでそんな事言うの?楽しもうよ」
真理子は頬を膨らませながらあたしの腕を軽く揺する。
なんでまたみんなと会わなくちゃいけないのよ。
どーせ、ロクな事ないんだから。