恋の訪れ

「あたし言ったでしょ?もう誘わないでって」

「どーしたの、莉音、恐いし」

「なんかあったわけー?」


真理子に続けて香澄先輩はあたしに視線を送ってくる。


「もう標的になるの嫌なの」


思ってる言葉を口にしたあたしは、お皿の上にのってるポッキーを数本口の中に入れる。

真理子と香澄先輩はお菓子にほぼ手をつけないから、あたしが一人で食べてるようなもんだけど。


「標的って?」


真理子は不思議そうにあたしの顔を覗き込み、首を傾げる。


「昴先輩と居ると、あたし訳の分からない女から睨まれるの。だから嫌」


キッパリと口にすると「あー…」って真理子の微かな声が漏れる。


「それは莉音が可愛いからだよ」


そして続けられた真理子の言葉に、思わず顔を顰めた。


「可愛いって、なに?」

「だから莉音は可愛いから、みんなが嫉妬するんでしょ?」

「そんなの違うし。この前だってね、睨まれたの、香澄先輩と同じ学校の人に!」

「え、そうなの?どんな奴だった?」


香澄先輩は驚いた様子で雑誌から視線を再び上げる。


「どんな奴って、もうみんな一緒に見えて分かんない。とにかく派手だった」


ほんとに、ほんとに昴先輩に近づく人って、派手な人ばかりだから、みんな同じ人にしか見えない。

もう何回ってわからないくらい睨まれてるから、正直ほんとに嫌だ。
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