恋の訪れ
「昴ってさ、最近莉音に優しいよね?」
「ですよねー香澄さん。あたしも思ってたの。だって昔の王子様だもん」
キャーって甲高い声を上げる真理子に、ウンザリする。
真理子っていつも昴先輩の事になるとテンション高くなるんだから。
絶対に面白がってるよ。
「別に王子様でもなんでもない。王子様はさ、ヒロくんだよ」
「はぁ!?あんたまだ言ってんの?莉音の頭の中はどうなってんのよ」
呆れ口調で言う真理子は顔を顰めたまま、あたしの頭をツンと軽く押す。
「だから告ればいいのに」
香澄先輩はシレっとした口調で言う。
それができたらしてます。
「って言うかさ、あんた弘晃に何か特別な事してもらった事あんの?」
「…特別?」
真理子の言葉に思わず首を傾げてしまった。
「そう、特別な事。何か助けてもらったとかさ、何か貰ったとかさ、何かしてくれたとかさ、ある訳?」
「うーん…」
そう言われてみて考えたけど、とくにこれと言った事は何もない。
「ほら、何もないじゃん」
「あ、誕生日にクッキー貰った」
「それだけじゃん。そんなの昴先輩だってずーっと莉音に金平糖あげてたじゃん」
「……」
結局は真理子と香澄先輩に話してしまった。
言わないでおこうって思ってたけど、結局は内緒に出来ないあたしの性格から話してしまった。