恋の訪れ
冬の夜はなんだか冷たくて寒い。
学校帰り、真理子とショッピングをした後、雨脚が怪しくなり真理子と別れた。
傘を持ってないからとにかく急ぐ。
冬の空は暗くなるのが早いせいか、辺りさえも静かさを増す。
だから近道をしようといつもとは違う道で帰った。
真っ黒な暗闇の空き地を抜け出そうとした時、
「ねぇ、アンタ!」
弾けるくらいのその声に、あたしの足は必然的に止まった。
恐る恐る振り返ると、そこには制服姿の女3人。
その人たちは見た事のある人だった。
そう香澄先輩と同じ学校の、人達。
もうこの時点で嫌だと分かった。
この先に言われる事も全て、分かった。
絶対に、昴先輩の事。
だから止めてた足を再び動かすと、「待ちなよ」グっと腕を掴まれて再び足が止まる。
「…何ですか?」
恐る恐る声を出すと、あたしの腕を掴んでた女の顔が一瞬にして曇る。
そしてグっと腕に力を込められると、あたしは顔を顰めた。
それと同時にポツポツと降り出してきた雨が無性にも冷たかった。
「アンタさ、昴の何?」
やっぱり、そうだよね…
分かってたけど、昴先輩の名前を聞くと物凄く嫌。
「何って…何もないです」
「はぁ!?なんもないのに昴の車に乗ってたんだ」
「……」
「彼女でもねーのに調子こいてんじゃねーよ」
張り上げた声に、何も言い返すことも出来なく、ただ俯くしか出来なかった。