恋の訪れ

確かに、あたしは昴先輩の女でもない。

でもそれは、あなたもなんじゃないんですか?…って思ったけど言えなかった。


だから先輩は嫌。

あたしは一体何度、こんな目に合えばいいんだろうって。

次第に目が熱くなってきた。

ほんと、泣きそう。


「なぁ、なんとか言えよ。昴がアンタ相手にする訳ねーじゃん。ノコノコくっついてんじゃねーよ」

「…別にそう言うつもりじゃ…」

「はぁ!?なに?じゃあ、どー言うつもりなわけ?」

「…あたしは別に…」

「うざっ、」


小さく呟かれた声とともに、バチンと乾いたような雨で湿ったような音を響かせたのはあたしの頬からだった。


「…っ、」


一瞬、何が起こったもかも分からず。でも左頬に痛みを感じるのだけは分かる。

その数秒後、あたしなんで叩かれた?その頬に触れた。


「マジでうぜー、調子のんなよ」


後ろに居た女はキャッキャ声を上げて笑い。

その面白そうに見つめて来る視線からあたしは外す。


次第に目から一気に熱いものが込み上げ、それが頬を伝った。

その場から離れて行った女の人達の背中を見る事無く、あたしはその場へとしゃがみ込む。


込み上げて来た涙と、頬の痛さ。

それより、もっともっと痛かったのはあたしの耳だった。


打たれた時に耳まで掠った所為か、耳がジンジンと痛む。
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