恋の訪れ
痛くて、痛くて、そのままあたしは膝をついた。
雨がだんだんと強くなる一方、寒さも増す。
…お姉ちゃん、助けてよ。
心の中で叫んだものの、鞄の中から携帯すら取り出すことも出来なった。
――――――…
真っ黒な暗闇から抜け出す様にゆっくりと目を開けた。
灯りが広がって、真っ白な天井が見える。
どこ、だろう。そう思ってすぐだった。
「…おん?……わかる?」
肩を軽く触られ、微かに聞こえた声。
正直、何言ってるのか、聞きづらい。
目を開ききった時、そこに見えたのは、お姉ちゃんだった。
「…お姉ちゃん」
そう呟いた隣に居たのは真理子で、目を真っ赤にして泣いてた。
いつも泣かない真理子が泣いてた。
お姉ちゃんが何かを言ってる。
だけど、良く分からなく、首を傾げ、その左耳に違和感を感じる。
そっと触れると、何かが耳にくっついてる感触で、それがガーゼだとは数秒経ってから気づいた。
お姉ちゃんは慌てて左からあたしの右に移動し、耳元に顔を寄せる。
「…莉音、聞こえる?」
「うん」
軽く頷くと、お姉ちゃんは安堵のため息を漏らす。