恋の訪れ
「莉音がなかなか帰って来ないから真理子ちゃんに電話したらとっくに帰ったって言うから」
「……」
「心配で心配で物凄く探した」
「……」
「莉音、雨の中、倒れてたんだよ」
「……」
「昴が、見つけてくれた」
「…っ、」
その名前を聞いた途端、あたしの瞳が微かに揺れたのが自分にでも分かった。
それと同時に、目じりに滴が溜まるのも分かった。
「ママとパパが物凄く物凄く心配してる。今、莉音の荷物を取りに帰ってるから居ないから言うけど、」
「……」
「莉音、もしかして叩かれた?先生がなんらかの衝撃で耳付近にある筋を痛めてるって。叩かれた以外、そんな事ならないと思うけど。ねぇ、莉音、誰に…誰に叩かれた?」
「……」
その瞬間、溜まってた涙が頬を伝った。
もう思い出したくもないのに…
「その衝撃で耳が炎症起こしてる。雨の中だったから低体温になってるし。数日間入院になるって」
「……」
「ママとパパには詳しい状況言ってないから。言ったら今よりもっと物凄く心配するから。調子が悪くなって倒れてたって言ってあるから」
「……」
「ねぇ、莉音、聞こえてる?」
「…うん」
「ちょっと真理子ちゃん、一旦出よう」
泣きじゃくる真理子が気になったのか、お姉ちゃんは真理子の身体を擦り、頷く真理子とともに姿を消す。
病院なんだ、ここ。
そんな事を思っていると暫くして、人影が見えた人物に思わず息を飲みこんだ。
…昴、先輩。