恋の訪れ
「…昴は?あんたはどうするの?」
「……」
暫く経って聞こえたお姉ちゃんの声。
そっか、先輩まだ居るんだった。
「帰んないの?」
「……」
「ちょっと聞いてんの、あたしの話」
「香恋さん、帰れば」
「相変わらず冷たい言い方ね」
「むしろ帰って」
「はぁ!?」
「莉音と、2人にさせてくんね?」
「別にいいけど。多分この子、ずっと喋んないわよ」
「それでもいいから」
「多分、昴の事、嫌いだと思うし」
「それでもいいから」
「昴の顔も見たくないと思うけど」
「つか、うっせーな、帰れよ」
「あぁ、そうですか。お願いだから、綺麗にさっぱりと水に流しといてよね」
カツカツとヒールの音が遠ざかっていく。
そして今、まさにあたしと先輩の2人なんだと思うと、余計に顔なんか出せなくなった。
お姉ちゃんが言う通り、先輩の顔なんて見れない。
むしろ今は見たくないんだ。
でも、だけど昴先輩はあたしと二人になったからって、一言も言葉を発することはなかった。
だから時間が経つごとにもう居ないんじゃないかって思うくらい静かで、だからと言って顔を出すことも出来なく、気づけばあたしは眠りに落ちてしまっていた。