恋の訪れ
好きの気持ち

どれくらい眠ったのかも分かんなかった。

目を覚ますとシーツの隙間から微かに漏れる窓からの光。

顔を出そうとシーツを剥ぎ取ろうとした時、


「…っ、」


腕に乗っかった重りで思うように動かなかった。

誰かに繋がれた腕。

そこから伝わってくる温もり。


反対側の空いている手でシーツを剥ぎ取ると、昴先輩はベッドに突っ伏して眠っていた。

あたしの手をギュッと握って、眠っている先輩から目を離せられなくて、ただ茫然と見る。


…帰ってなかったんだ、先輩。


同じ態勢でずっといた所為か身体が自棄に重い。

先輩と繋がれた手を外すと、あたしはそっと身体を起す。


昴先輩の寝顔を見るのは初めてじゃないけど、やっぱここまで端正な顔に見惚れる。

色んな人が先輩にくっついて行く気持ちも分かる。

分かるけど、分かるけど、でもやっぱりもうこれ以上、辛い思いなんてしたくない。


先輩と居ることで、もう泣きたくなんてない。

一緒に居たくないってのが、本音。

思い出しちゃうと、余計に辛いから、もう口に出したりしない。


「…莉音?」


不意に聞こえた声に、視線を向けると、顔を上げた先輩はあたしを見つめた。

そしてそのまま伸びをする。


「おはようございます。今、何時ですか?」


平然を偽って、口にするあたしに昴先輩はポケットから携帯を取り出し画面を見つめた。
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