恋の訪れ
「今…9時13分」
「先輩、学校行かないんですか?」
「学校?莉音行ってねーのに行けねーし」
「あたしは大丈夫ですよ」
「…大丈夫じゃねーだろ」
コンコンと部屋をノックされる音に、「はい」と昴先輩が返す。
「あ、新田さん起きた?朝方来たけど眠ってたから。朝食、持ってきたんで」
看護師さんはテーブルに朝食を置き、「ちょっとごめんね」そう言って、あたしの腕の脈にそっと触れる。
「うん大丈夫だね。熱は?」
「…熱?」
「ちょっと昨日、微熱あったから測ってみて」
「あ、はい」
渡された体温計を受け取り、数秒で測れた体温を看護師さんに渡す。
「36度8。大丈夫かな。ちょっと耳のガーゼ剥がしますね」
「何のためにつけてたんですか?」
「昨夜雨も凄かったし炎症起こしてたから雑菌を防ぐために。どう?痛みは?」
「ないです」
「この後、10時から検査だから。またお迎えに来ます」
「検査って?」
「大丈夫。簡単な検査だから。正常か確かめる検査だから。じゃまた来ますね」
看護師さんが出て行こうとした瞬間、「すみません、ちょっといいですか?」昴先輩は立ち上がって、看護師さんを追っかける。
不思議そうに目を送った後、あたしはそっと左耳に触れた。
ガーゼが無くなった事で開放的になる。
もう別に聞こえてからいいんだけど。なんて思った時、再び現れた昴先輩に視線を送った。