恋の訪れ
「じゃーん!!莉音の好きなものー」
夕方、弾けた声と現れたのは真理子と香澄先輩だった。
「ケーキだよーん」
箱をブラブラする真理子は、あの日見た真理子とは全く別人でいつもの真理子だった。
「って言うか莉音、どんだけ高いケーキ食べてんのよ」
「ほんとー、いつからお嬢様なわけ?」
真理子と香澄先輩は困ったように顔を顰め、そして笑みを浮かべた。
「…お嬢様?」
「もう、見て見て、このケーキ」
真理子は箱を開けて、あたしの目の前に差し出すと、パアっとあたしの顔から笑みが零れた。
「うわぁーこれ好きなんだ」
「だからいつからお嬢様なわけ?超高いじゃん、このケーキ」
「どうしたの、これ」
「どうしたのって買ったんだから、あたしと真理子で」
「そうなの?よくわかったね」
「昴がさ、教えてくれたの」
「…昴先輩が?」
「そう。で、行ったら行ったで、超高いじゃんか、このケーキ!!後で昴にお金返してもらわないと。ね、真理子?」
「そうだよー、だってケーキに3千円も使ったんだからー」
ギャーギャー喚く真理子と香澄先輩に思わず苦笑いする。
だったら買ってこなくていいのに。なんて言葉は飲み込んで、
「ありがとう」
そう言って、笑みを浮かべた。