恋の訪れ
「え、何?あく…何て言った?」
耳打ちしてくる真理子に素早く首を振る。
「いや、何でも…」
「ね、めちゃカッコいいでしょ?ヤバいよね」
「うん。…ヤバいね」
「でしょー!莉音も見る目あんじゃん」
バシンと肩を叩かれたけど、そうじゃない。
あたしが思ってる“ヤバい”と、真理子が思ってる“ヤバい”は違う。
同じ言葉であっても意味が全く違う。
真理子が思ってるのは、カッコいくてヤバイと言う意味。
だけど、あたしが思ってるのは最悪でヤバイと言う意味。
だって、この男。
…悪魔だもん。
コンビニの前で女を泣かせてた最低な男なんだからっ!
だけどこの昴と呼ばれてた男はどこまででも最低な男だった。
遅れて来たのにも係わらず、面倒くさそうに置かれてあった珈琲を口に含みながら携帯を触る。
俺は関係ねぇぞ!ってな感じでこのワイワイとした空気には一切ふれようとはしない。
…まったく、何なの、この男。
よりによって高校生だとは…。
しかも同じ学校。
最悪だよ。