恋の訪れ
「で、昴は来たの?」
香澄先輩の言葉に首を振る。
「昴先輩、昨日も今日も来てなったんだ、学校に…」
「ねぇ、莉音?昴の事、嫌い?」
困ったように笑みを漏らして首を傾げる。
なんでそんな事を聞いてくるんだと思いながら、視線を下に落としてみる。
むしろ、もう忘れたいのに。
この前の事は、もう思い出したくもないんだけどな。
耳の調子はいいとは言えないけど、ちゃんと聞こえてるから、もう余計な事は考えたくない。
なのに、香澄先輩と真理子は淡々と言葉を発していって、それにあたしはついていけなかった。
「別に莉音に隠す事じゃないと思うから話すけど、昨日あたしと昴でその女の所に行ったんだ」
「……」
「まぁこれまた行くまでに大変だったわけで。昴がお前は来んなってしつこくて、もう…頑固なんだから」
ため息とともに吐き捨てられた香澄先輩の言葉に真理子はクスクスと笑みを浮かべた。
「しつこいって、香澄さんも相当しつこかったんじゃないの?昴先輩をそこまで言わすなんて」
「まー…そっか。でも行ったけど、あたしは役に立たずって感じで…」
「……」
「昴、すっごい怒鳴ってた。正直言って、あんな昴見た事なかったな。俺の前に一生顔出すなって怒鳴ってたよ」
「いやん。昴先輩カッコいい。あたしも行きたかったな」
何処にどうノロケる所があるのか分かんない。
真理子は両頬に手を添え、顔を緩ませる。