恋の訪れ
「カッコいいって言うか…。あ、莉音の為にここまで怒るんだって思ってね」
「てか香澄さんも怒ってたじゃん。ま、あたしもだけどね」
「だからそーじゃなくてさ、あまりの昴の凄さにあたし出る幕なかったんだよ。一発、そいつを叩いてやろーって思ってたけど、出る幕なしだったわ」
「……」
「女は謝ってたけど、昴はお前の顔はもう見たくねーからって…」
「昴先輩、素敵。そんなの当たり前じゃん。ねー、莉音」
不意にギュッと身体を抱きしめられてしまった。
「ちょ、真理子」
首に巻きつかれるように真理子の腕が回る。
「いや、離れない」
「えぇっ、」
「もう一生離れてやんない」
「えっ、ちょ、真理子!?」
「可愛い莉音の顔、台無しだよ。心配したんだよ?」
「うん…」
「ごめんね、莉音。遊ばずにすぐに帰ったら良かったね。あたしが寄り道しようって言ったから」
真理子のトーンが少し落ちたのが分かった。
「真理子の所為じゃないよ。だから離れてよ、真理子」
「うん。それで香澄さん、その後どうしたの?」
スッと離れた真理子は香澄先輩に視線を向ける。
だけど、香澄先輩は深く大きくため息をつき、「最悪だった」顔を顰めたまま小さく呟いた。