恋の訪れ

「最悪って?」

「昴、あたしが居る事忘れてたんだよ!置いて帰ろうとするから″待ってよ″って言ったら、″あー、お前居たの?″って」

「……」

「もう、はぁ?って感じだわ。一緒に来てんのに忘れられるし、挙句に、″だから来んなっつっただろ″って怒られるし」

「あら、香澄さん大変だったのね」

「それで莉音にケーキ買ってってやってってさ。だから昴からなの…あ、でもお金はあたし達だから。ね、真理子」

「そーだよぉ…マジで高くて昴先輩、鬼だと思ったよ」

「だからさ、真理子。昴にお金請求しようね」

「そんな事したら怒られない?」

「大丈夫。あたしが言うから」


そんな事を言うもんだから、もうケーキすら食べづらくなった。

早く食べようって、真理子たちは言うけど、このケーキに込められたものがあまりにも凄くて重くて…

正直、味なんて分かんなかった。


その日の夜、お姉ちゃんが来てくれた。

ママは仕事が忙しいからって、お姉ちゃんが来てくれた。

いつものお姉ちゃんと違って、優しくて、優しくて物凄く優しいもんだから入院も悪くないな、なんて思ってしまった。


その次の日はサクヤ先輩もタツキ先輩も来てくれた。

だけど昴先輩はあれっきり姿なんて現せなかった。


別にいいんだけど、みんな昴先輩の名前すら出さないから、何してるんだろうと思ってしまった。

会いたくないのに、会いたい。と思う感情にどうしたらいいのか分からなくなってた。
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