恋の訪れ
何がどうなってんだろうと思った。
昴先輩があたしを好き?
え、なに?夢なのか、現実なのかさえ分かんなくて、暫く佇んでしまった。
意地悪ばっかで偉そうで、冷たくて…
どうみてもあたしの事を好きだとは思えない。
頭が混乱する。
混乱しすぎて余計に眩暈が起きそう。
もしくは熱だって上がりそう…
病室に帰っても、ただひたすら昴先輩の事ばかり考えてしまって頭を悩ます。
今日はきっと…多分、寝れそうにない。
「…莉音?」
夕方、顔を出したのはお姉ちゃんだった。
「さっきね、看護師さんが言ってたけど明日、熱が下がってたら日曜の朝に退院出来るって」
洗濯物を持ってきたお姉ちゃんはロッカーに片付けながらあたしに視線を送った。
「そうなの?…でも下がるかな」
昼間の昴先輩の事で熱なんか下がるどころか上昇してそうだ。
だけどそんな事は言えるわけでもなく。
「下がるでしょ。じゃなきゃずっと入院よ」
「それは嫌だけど…。ねぇ、お姉ちゃん?」
「うん?」
「お姉ちゃんはずっとあたしの耳の事知ってたんだ」
「昴に聞いたの?」
「うん。でも記憶ない。昴先輩に河原に連れて行かれたことも」
「え?」
「…え?」
オウム返しの様に言葉を返してしまった。
お姉ちゃんは顔を顰め、首を傾げたままあたしをジッと見つめた。