恋の訪れ
「昴が連れて行ったって?」
「うん。行くなって言われてる所を昴先輩が連れて行ったって。その後、流されて耳が…」
「違う、そうじゃない」
荷物の整理をしたお姉ちゃんは、そう真剣に言ってロッカーを閉め、パイプ椅子に腰を下ろす。
「そうじゃないって?」
「昴じゃない。あんたが行ったのよ」
「え?」
「行きたい行きたいってダダをこねたアンタが行ったの!」
「あたしが?」
「そう。それを昴は必死で止めてた。だけど、あんた言う事聞かなくて」
「……」
「あの時、あたしは聖と遊んでたから加わってないけど、莉音と昴が行く行かないで揉めてたのは知ってる」
「……」
「その内、気づいたらアンタ達、居なくて…」
「え、あたし?」
「そう。何?昴は俺って言ったの?」
「うん…」
「昴じゃないよ、アンタだよ!アンタが泣き叫んで行くもんってタダこねてたから!」
「…っ、」
なんであの時、先輩は本当の事を言ってくれなかったんだろうと思った。
どうして先輩は自分の所為にしたんだろうって。
ごめん、ごめん…って謝ってたのも何でだったんだろうって。
あたしが悪いのに。
結局はこの耳は自業自得で出来た耳だったんだ。