恋の訪れ

″昴は今でも後悔してるよ。俺がもっと止めてたら莉音の耳は正常だったのにって″

そんな言葉を残して帰って行った、お姉ちゃんの言葉に途轍もなく苦しくなった。


何でこんな風に、あたしの耳は弱いのだろうってずっと思ってた。

結局は自分の罪で犯した過ちなのに、それを昴先輩までもを巻き込んでたって事。


どうして先輩は自分の所為にするの?

なんでそれをずっと隠してたんだろうって…


悩みすぎて、熱も上昇してるだろうと思ったけど土曜にはすっかり下がってて、予定通り日曜に退院した。

家に帰ってからも、ずっと頭の中は昴先輩ばかりで。


結局次の朝まで引きずってて、久しぶりの学校へ足を踏み込んだ。


朝一に職員室に向かって、そこで貰ったのは休んでた分の教科のプリント。

そのプリントを見た瞬間に、思わず気分すら悪くなった。


「…莉音?」


不意に聞こえた声に振り返ると、少し離れた所からヒロくんが近づいて来る。


「あっ、ヒロくん」

「莉音、大丈夫か?真理子から聞いてすげぇビックリして」

「うん。ちょっと体調悪くて…」

「耳だって?」

「うん。でもね、もう大丈夫なんだ」


ニコっと微笑んで、ヒロくんの背後に視線を向けた時、何もなかったかのように通り過ぎていく昴先輩を目で捉えてしまった。

あの日、昴先輩に″好きだった″って、そう言われてから何も話してなくて、会っても居ない。

それも心のどこかで引っかかってるってのもあるけど、ヒロくんと居る手前、先輩を呼ぶ事は出来なかった。


もし、あたしがヒロくんと居なかったら先輩はあたしに声を掛けてたの?
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