恋の訪れ

放課後、帰る真理子を見送って、あたしは机に数枚のプリントを並べシャーペンを握る。


「ごめん、遅くなった」


暫くして誰も居なくなった教室にヒロくんはそう言って入って来た。


「ううん」

「てか、莉音。今日中には全部できねーだろ」

「うん、そうだね…」


数えてみたら6枚もあった。しかも両面…

さすがに病み上がりにはきつい。


「ま、今日と明日で終わんじゃね?」

「うん、そうしよう」

「そうしようって、莉音が頑張んねーと」


クスクス笑うヒロくんにあたしもつられて笑う。

今日中には3枚終わらそうと思い、ペンを進めた。

だけど次第にペースダウンしていく自分の手。


病み上がりなのか、それとも疲れたのか頭が重い。

おまけに左耳も重い。

慣れない勉強をしている所為か凄く疲れる。


「…莉音?この英語やったら今日は終わろ」

「うん」

「えー…っと、動詞、名詞、形容詞…」


ヒロくんが話してる言葉を片隅に、何故か昴先輩が浮かんできた。

こーやって先輩に教えてもらったっけ。


教え方は偉そうだったけど、物凄く解りやすかった。

字だって物凄く綺麗だったし…


ってか何で昴先輩が頭の中を駆け巡るんだろ。

今、あたしの隣にいるのはヒロくんなのに。

ずっとずっと好きだったヒロくんなのに、どうして先輩が出て来るんだろう…


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