恋の訪れ
昴先輩と居る時は、いつもヒロくんがいいって言ってたのに、どうして今は昴先輩なんだろう。
どうしてヒロくんと居る今を、幸せだと思えないんだろう…
「…莉音?」
暫くして不意に呟かれたヒロくんに視線を上げる。
「え?」
「どした?分かんない?」
「うん…」
疲れたってのが本音。でも何故か言えない。
だってヒロくんずっと、あたしの左隣なんだもん。
決して聞こえないわけじゃない。
でも疲れた。
必死で聞き取っているから疲れた。
昴先輩だったら、いつの間にかいつも右に移動してくれてたのに。
ヒロくんだって耳の事、知ってるのに…
昴先輩なら″疲れた″ってあたしが口にしなくても、″もう帰ろ″ってそう言ってくれたのに、ヒロくんはそうじゃないみたい。
だからって帰りたいって言えない。
せっかくあたしの為に付き合せてんのに、そんな事言えない。
…って、何であたしそんな事、考えてるんだろう。
なんでヒロくんと昴先輩を比べてるんだろう。
あたし、どうにかしてる。
ヒロくんと居るのに、寂しい…