恋の訪れ

昴先輩と居る時は、いつもヒロくんがいいって言ってたのに、どうして今は昴先輩なんだろう。

どうしてヒロくんと居る今を、幸せだと思えないんだろう…


「…莉音?」


暫くして不意に呟かれたヒロくんに視線を上げる。


「え?」

「どした?分かんない?」

「うん…」


疲れたってのが本音。でも何故か言えない。

だってヒロくんずっと、あたしの左隣なんだもん。

決して聞こえないわけじゃない。

でも疲れた。

必死で聞き取っているから疲れた。


昴先輩だったら、いつの間にかいつも右に移動してくれてたのに。

ヒロくんだって耳の事、知ってるのに…


昴先輩なら″疲れた″ってあたしが口にしなくても、″もう帰ろ″ってそう言ってくれたのに、ヒロくんはそうじゃないみたい。

だからって帰りたいって言えない。

せっかくあたしの為に付き合せてんのに、そんな事言えない。


…って、何であたしそんな事、考えてるんだろう。

なんでヒロくんと昴先輩を比べてるんだろう。


あたし、どうにかしてる。

ヒロくんと居るのに、寂しい…



< 291 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop