恋の訪れ

「え、ねぇヒロくん」

「俺、莉音が好き」

「え?」

「俺と付き合ってよ」


もう頭の中がパニックだった。

もうこれは夢でしかないと。


「ちょ、待ってヒロくん。ここ学校…」

「誰も居ないよ」


居たじゃん、さっき居たじゃん。

だって昴先輩居たから。


しかも昴先輩の前で抱きつくなんて…

お願い、やめて。


「ごめん、ヒロくん離して」


何でだろうか、嬉しいはずなのに喜べない。

分かんない、分かんない。

どうして喜べないんだろう。


こんなにも数年、ヒロくんの事を想って想って大好きだったのに、なんで″あたしも″って言えないんだろう。

ヒロくんの事、大好きだったのに、物凄く好きだったのに何故か今の感情は全く違う。


あたしの頭の中は何故か先輩で。

そんな先輩の前で抱きつかれて事が凄くショックだった。

よりによって一番見られたくない昴先輩の前で…


「ヒロくん、お願い…」

「ごめん」


少しヒロくんの身体を押すと、ヒロくんは謝ってすぐに身体を話してくれた。

あまりのビックリさに俯きながら呼吸を整える。


「ヒロくん、あたし…」


そこまで言ってあたしは何を言おうとした?

あたしも好きなの。

そうじゃなくて、あたしは先輩が好きなの。


答えなんて見つからなくて、普段使わない頭までも使う所為か眉間が痛む。


















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