恋の訪れ

「俺、本気だから」

「……」


真剣にそう言ってくるヒロくんに何て言ったらいいのかなんて分かんない。

どうしよう。

本気でどうしよう。

答えが分からないし、見つからない。


視線を落として、ただその答えを探してるのに、もう頭の中は真っ白で何も考えられなかった。


「今じゃなくてもいい。莉音の気持ち聞かせて」


なんて言ったヒロくんは、あたしの前を通り過ぎて行った。

そこで暫く佇んでしまった。

足だって重くて動かないし、呼吸すら乱れる。


居残って勉強してた所為もあり、学校を出た頃なんて、外は真っ暗だった。

帰ってからもヒロくんが頭の中に浮かび、そして昴先輩までも浮かぶ。

だけどその日を境に昴先輩の姿をあたしは一度も学校で見ることはなかった。


むしろ真理子曰、サクヤ先輩が言ってたけど、昴先輩は学校すら来てないと言う情報を耳に挟んだ。


だから余計に気になった。

土日を挟んで、火曜日。あと、2日で終業式。


ずっとずっと考えてた。

考えて考えて多分きっと、今までで一番頭を悩ませてしまった。



「…ヒロくんっ、」


今まさに正門を抜け出そうとするヒロくんをあたしは止めた。
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