恋の訪れ
「うん、でもな、」
タバコの煙を吐き出しながらそう言ったパパは一度言葉を止める。
「うん?」
「香恋な、莉音の事心配してたから」
「心配?」
「莉音に頼むの可哀そうだからって、自分でしてたんだけど…」
「そうなんだ。…着替えて来るね」
部屋に入って佇んでしまった。
お姉ちゃんが、そんな事思ってたんだって思うと、何故かシックリこなかった。
やっぱお姉ちゃんはいつものお姉ちゃんがいい。
なんて思いながら夕方までに仕上げないといけないクッキーを作り上げた。
「出来た」
「サンキュー莉音」
もう今から夜の仕事です!ってな格好をしたお姉ちゃんは、ラッピングしてあるクッキーを袋の中に詰めていく。
「でも食べてくれんのかな」
「食べるでしょ、なんたって今日はイブだよー。んじゃーね、」
ヒラヒラ手を振って出かけていくお姉ちゃんからカレンダーに視線を移す。
そっか。今日イブなんだ…
時計を見ると16時43分。
もう外の明かりも落ちてきて、冬の所為か日が沈むのが早い。
不意に浮かんだ昴先輩の顔。
何、してんだろ。
もう一週間以上会ってない。と言うか、学校すら来てない。
気になって、気になって、気になり過ぎたら行動が抑えられなくて、気づけばまた先輩の家まで来てしまってた。