恋の訪れ

「うん、でもな、」


タバコの煙を吐き出しながらそう言ったパパは一度言葉を止める。


「うん?」

「香恋な、莉音の事心配してたから」

「心配?」

「莉音に頼むの可哀そうだからって、自分でしてたんだけど…」

「そうなんだ。…着替えて来るね」


部屋に入って佇んでしまった。

お姉ちゃんが、そんな事思ってたんだって思うと、何故かシックリこなかった。


やっぱお姉ちゃんはいつものお姉ちゃんがいい。

なんて思いながら夕方までに仕上げないといけないクッキーを作り上げた。


「出来た」

「サンキュー莉音」


もう今から夜の仕事です!ってな格好をしたお姉ちゃんは、ラッピングしてあるクッキーを袋の中に詰めていく。


「でも食べてくれんのかな」

「食べるでしょ、なんたって今日はイブだよー。んじゃーね、」


ヒラヒラ手を振って出かけていくお姉ちゃんからカレンダーに視線を移す。

そっか。今日イブなんだ…


時計を見ると16時43分。

もう外の明かりも落ちてきて、冬の所為か日が沈むのが早い。



不意に浮かんだ昴先輩の顔。

何、してんだろ。

もう一週間以上会ってない。と言うか、学校すら来てない。


気になって、気になって、気になり過ぎたら行動が抑えられなくて、気づけばまた先輩の家まで来てしまってた。
< 299 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop