恋の訪れ
ここから早く立ち去りたいと思った。
ここからすぐにでも逃げ去りたいと思った。
「ねぇ、莉音ちゃん?」
不意に聞こえた声に視線を向けると、また新たであろう先輩が覗き込むようにしてあたしを見つめる。
「はい?」
「ねぇ、今度莉音ちゃんも行く?」
「は?」
「みんなでピクニック」
「はい?…ピ、ピクニックですか?」
「そうそう。バーベキューね、行こうよ」
「はぁ…バーベキューですか」
「な、おい。昴も行こうぜ」
そしてその先輩は別に誘わなくてもいい昴先輩まで誘う。
「あぁ」
素っ気なく返した昴先輩に、「よし、決まり」なんて言葉が返って来る。
別に行きたくなんてないのに。
って言うか行く気なんてほぼゼロに近い。
そもそもこれは合コンなんだろうか。
ただの雑談としか言いようがなくて、真理子とタツキ先輩が居る事自体おかしすぎる。
何だか訳の分からない話で盛り上がっていくこの苦痛な時間。
時間が経つことに事に眩暈を覚えてしまったあたしは、
「ちょっとトイレ」
真理子にそう言って部屋を出た。