恋の訪れ
「ねぇ、先輩。なんで学校来てなかったの?」
昴先輩はあたしから視線を避けたかと思うと足を進めて車へと向かう。
「ねぇ、昴先輩!」
再び声を出すあたしに、先輩は運転席のドアの前で立ち止まった。
「別に行ってなくても支障ねーし」
「……」
そんな事を言われたら、なんて言ったらいいのか分かんない。
今、目の前に居る先輩は、あの時…病院を最後に出会った時の先輩とは全く違くて冷たい。
先輩の前でヒロくんに抱きつかれたからなんだろうか。
昴先輩は、あたしがヒロくんを好きだと思ってるから。
先輩から″好き″と言われ、それがホントなのかどうかも今では分かんない。
答えはいらねーからって、敢えて聞かないって言ったけど、あたしは昴先輩に伝えたい。
やっぱ目の前にすると自分の気持ちがハッキリする。
好きだって。
でも、何故か言えない…
「莉音?ごめん、急いでるから」
腕時計に視線を落とした昴先輩は顔を顰めたまま小さく声を漏らす。
あぁ…タイミングなくす。
しかも、前にも聞いた事のある言葉。
先輩はいつもルーズなんだ。
約束事は全て遅刻する、ほんとに自由人。
どこ、いくの?
今までずっと何処行ってたの?
聖くんが一週間も見てないほど、何処行ってたの?
学校行かずに何処行ってたの?
頭の中が駆け巡ると同時に、
「もしかしてデート?」
なんて悲しそうに笑ってみた。