恋の訪れ

「…デート?」


案の定、昴先輩は首を傾げてあたしを見る。


「あ、ほら今日…イブだし」

「あー…てかデートはお前じゃねーのかよ」

「え?」

「ほら、アイツ。ヒロくんだっけ?抱きしめられてただろ?俺の前で」

「……」


やっぱ、見られてたんだ。

だから思わずため息を吐き出してしまった。


「行けば?早く。俺も用事あっし」

「……」

「もう暗いから送る事しか出来ねーけど」

「……」

「つか、なんか言えよ」

「……」

「お前が何も言わねーから俺、行けねーだろ」

「……」


断ったよ。だって、昴先輩が好きなんだ。って言葉が口から出ない。

それに先輩にありがとうって言葉も言えてない。

あたしを色々助けてくれた事。

口が開かない。どうしてなんだろう。


なんで素直に言えないんだろう。


「つかもう乗れよ。送るから。そーやって、突っ立ってられると困る」

「……」


昴先輩は玄関の前まで来ると、あたしの手を引き助手席へと乗せる。


「暗くなったら危ねーからホロホロ歩くなよ。来るんだったら連絡くらいしろって」

「…あたし昴先輩の連絡先知らない」

「あー…、そっか。そうだったな」


そう言った先輩はそれ以上口を開く事なく、気づけばあたしの家まで送ってくれた。
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