恋の訪れ

結局何も言えなかった。

ほんとに何も。

だから何しに行ったのかも分かんないし、ただクッキーあげただけ。

でも分かった事と言えば、昴先輩の事がやっぱり好きなんだって自覚させられた事。


なんでなんだろう。

ほんとに嫌いだったのに、いつの間にか…



「やっぱ莉音って上手だよねー」


次の日、香澄さんに誘われて来た真理子の家。

余ってるクッキーを二人にあげると、真理子は口に運びながら笑みを浮かべた。


「でも香恋さん、店の客にあげんでしょ?莉音が作ったやつなのに。超、ウケるよね香恋さんって」


ギャハハと笑う真理子に、香澄先輩までもが笑う。


「って言うかさ、真理子と香澄先輩、今日は予定ないんですか?クリスマスなのに…」

「って言う莉音だって何もないじゃん。むしろクリスマスは毎年一緒に居るでしょ?」

「ほんと、莉音だって何もないでしょ?もうイブに予定は終わらせちゃったしね」


真理子に続けて香澄先輩までもが言う。

だってほんとに何もないし。

むしろ、毎年こんな感じだし。


「ま、そうだけど…」

「って言うかさぁ…莉音さ、退院してから変だよね?」

「あー、あたしも思ったぁー」


香澄先輩の後に続けて真理子が賛同して声を上げる。

そんな二人に思わず顔を顰めて俯いた。
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